印刷とインキについて

電算写植ベースとDTP工程の違い(オフセット印刷の場合)

電算写植とDTP工程を並べてみると、DTP工程が非常にシンプルであることがわかります。電算写植の場合、それぞれのステップごとに専用の機械、または人の作業が介在します。また、入力と出力が複数回行われるため、その間にデータの劣化が起こります。DTP工程では、ページ製作は1つのマシン(主にMACINTOSH)で行われます。また、出力は1度だけなので、データの劣化はほとんど起こりません。

※DTP工程に関しては、まだすべての現場が完全にデジタル化しているわけではありません。一部を旧工程に依存したり、直接刷版出力を行わず、フィルム出力している事業所もあります。写真に関してもデジタルカメラが普及はしているが、まだ全部の業務でおこなわれているわけではありません。

印画紙・フィルムを使用した印刷工程
各版式の特徴
凸版

版面に高低があり、その高い部分にインクが附着し、圧力によってそれが紙面に移って印刷が行われます。(例・活字の印刷)

木版…板目に彫刻する。
亜鉛凸版…線画の製版に多く用いられる。
銅凸版…特に精密を必要とする場合の凸版。
網伏せ凸版…亜鉛凸版の一部分に網目または地紋などを焼きこんだもの。
写真版…網版、または写真銅版ともいう。銅板を使う。
ハイライト版…鉛筆が、或毛筆画等の原稿から製版したもので、原稿の白い部分は完全に網点がない。
原色版…三色版或は四色版、色彩のある原稿を写真的に三つの原色を分解し、赤、青、黄の三つ、或はそれに墨を加えた四つの写真版を製版して各々のインキで刷り重ね原稿の色を表現する。

平版

版面は全体に平面でインキが着くべき部分(画線)とそれ以外の部分(地)とは、化学的に性質を異にする。画線は油性でインキを受けつけるが、水分を反撥し、地は水分を受けてこれを保持する。

石版…石版石に描き版、または転写で製版する。印刷能率は低い。レーベルその他美術印刷に向く。
亜鉛平版…描き版あるいは転写。
プロセス…亜鉛版に写真で焼け付けて原版とし、転写。又は直接焼き付けて刷版をつくる。

平版

最も一般的に用いられます。
平凹版…きわめて精密な製版ができ印刷された画線が盛りあがっているため、写真で複写しても影を生じて印刷物からの複製が不可能なため、有価証券等に多く用いられる。
多層平版…大きさが同一で深さの異なる無数の四角な子孔でできた版面で、画像の濃淡は、その子孔の中にあるインキによって現わされるので、ほかの版式のもたぬ深みがです。大量の印刷物を高速度で印刷できる。
平凸版…重厚な美しい色彩印刷が大部数、高速で印刷できる。
コロタイプ…きわめて精密な製版ができ印刷された画線が盛りあがっているため、写真で複写しても影を生じて印刷物からの複製が不可能なため、有価証券等に多く用いられる。

凹版

インキの附着すべき部分が、地の部分より低く窪み、その深さは一定しません。深さによってインク膜の厚さが異なり諧調がでます。
インキは一回版面全体に盛られ、不要な部分に附着したインキは、ドクターで掻きとられて画線にだけインキを残して印刷が行われます。
彫刻凹版…きわめて精密な製版ができ印刷された画線が盛りあがっているため、写真で複写しても影を生じて印刷物からの複製が不可能なため、有価証券等に多く用いられる。
グラビア…大きさが同一で深さの異なる無数の四角な子孔でできた版面で、画像の濃淡は、その子孔の中にあるインキによって現わされるので、ほかの版式のもたぬ深みがでる。大量の印刷物を高速度で印刷できる。
多色グラビア…重厚な美しい色彩印刷が大部数、高速で印刷できる。

印版の作り方

使用する機器などによりさまざまな方法があります。

フィルムのセットとパンチ穴
あらかじまパンチ穴を開けたフィルム片(耳、帯などといいます)を、使用する印刷機に応じて用意します。ライトテーブル上でビンバーを使用して、トンボを目安にして性格に位置を合わせ、フィルムをフィルム辺にテープ止めします。どれかの版を基準とし、他の版をこれに合わせます。

PS版とパンチ穴
PS版にも同様にパンチ穴を開けます。

版とへのセット
ピンを基準にフィルムをPS版にセットしテープで固定します。

PS版への露光
ピンをはずし、露光装置のカバーガラスを閉め、真空密着させてから露光します。

PS版現像処理
露光済のPS版は専用の現像液や自動現像機などを使用して、現像処理を行います。

PS版の原理

ネガタイプPS 版の画線形成の仕組み

ネガタイプPS版は光の当たった感光層の部分が軟化し画線部となります。光の当たらなかった部分は現像液で溶解除され、非画線となります。したがって露光不足の場合には画像強度は弱く、露光オーバーの場合には耐刷力は安定しますが、網点の太りを生じます。

ポジタイプPS版の画線形成の仕組み

ポジタイプPS版は光の当たった感光層の部分が光分解し、現像液で溶解して非画線部となり、光の当たらなかった部分が画線部となります。したがって露光時間は耐刷力と無関係ですが、不足の場合には不要の感光層が除去されないため、インキが非画線部に着肉し汚れの原因となります。また、逆に過度の場合は網点の細りが発生します。耐刷力に影響なく、網点の大きさを露光により細らせることができることから調子再現の重要なカラー印刷に多く用いられます。

プロセスカラー(CMYK)による印刷

一般的なカラー印刷は、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、スミ)の4色のインキを使って進められます。理論上はCMYの3色あれば、掛け合わせによってさまざまな色をつくることが可能ですが、実際には3色だけだと黒やグレーの再現性がよくないため、Kを加えて補っています。このCMYKの4色を「プロセスカラー」といいます。
オフセット印刷では、このCMYK各色を「アミ点」という小さな点の集まりに置き換えて、色の濃い部分はアミ点を大きくし、色の濃い部分は、あみ点をちいさくして、色の濃さを調整しています。カラーの原稿を4色のアミ点に置き換えるこの作業を「4色分解」といいます。手近な印刷物をルーペで覗いてみると、アミ点と色の濃度の関係が、文字どおり一目瞭然に理解できます。
なお、原稿のカラーデータをRGB(レッド、グリーン、ブルー)で製作した場合、プロセスカラー印刷を行うためには、データをRGBからCMYKに変換する必要があります。この変換は、グラフィックソフトの機能を利用してデザイナー自ら行うこともできるし、印刷会社に頼んで変換してもらってもいいでしょう。
CMYKの4版を使って印刷を行うのが、もっとも一般的なカラー印刷の工程ですが、場合によってはインキ色を増やしたり、一部のインキを取り替えたりすることもあります。
CMYKのほかに「特殊インキ」と呼ばれる特定色のインキをプラスしたり、あるいはCMYKのいずれかを特色インキと取り替えるといったケースがそれにあたります。
なお、最近ではRGBによるあざやかで透明感のある色合いにユーザーが慣れたことに起因して、印刷にもより広い色域の再現が求められる傾向にあります。そこで、印刷関連各社では、特色インキによる調整ではなく、CMYKというプロセスインキのセット自体を、色合いのあざやかな独自開発のインキセットに取り替えて、よりユーザーの要望に使い仕上がりにする場合もあります。

印刷インキについて

インキは色材である顔料30%~60%、インキ流動性をあたえるビヒクル35%~65%をミキサーで混ぜペースト状にしてからローラーで練って作ります。ビヒクルの種類・や量によってインキの性質が変わります。必要に応じて助剤を加えます。

印刷インキの種類

酸化重合タイプ
枝葉のコート紙やアート紙への印刷に用いられます。平版インキや凸版インキがこれに相当します。乾性油を主成分とするインキの印刷面に、空気中の酸素が吸収されてビヒクル分子をつなぎ合わせ、綱状の巨大分子として乾燥膜を形成します。

蒸発タイプ
オフ輪印刷やグラビアインキのように、インキが被印刷体に転移した後、加熱によりビヒクルが蒸発して、固形膜を形成するタイプをいいます。

浸透タイプ
新聞インキのように、インキが被印刷体に移転した後、ビヒクルが被印刷体の中に浸透して、個性膜を形成します。

紫外線軟化タイプ
UV(紫外線)インキのように、特定のエネルギ分布をもつ光を照射させることによって、科学変化を起こして乾燥するタイプです。

耐熱性タイプ
フレキソ印刷やグラビア印刷によるパッケージは、内容物の充填工程において、熱板によってインキ面に熱がかかるので、このような熱に対して耐性をもったタイプです。

耐光性タイプ
屋外で使用するポスターのように、長時間太陽光にさらしておいても、退色(変色)しにくいタイプです。

耐摩擦性タイプ
段ボールやカートン等は、輸送のときに相互に擦られる可能性が大なので、このような摩擦があって損傷しにくいタイプです。

耐薬品性タイプ
薬剤、化粧品、食品のパッケージのように、酸やアルカリ、アルコールやパラフィン等に対して、退色・変色・溶解しにくいタイプといいます。

特色インキを使った印刷

写真を多色分解して特色を補う

トーンの美しい写真やイラストを印刷で表現するとき、色の再現性を高めるため、図版原稿を多色分解して、CMYKのほかに特色を補うことがあります。写真集で写真を原稿どおりに再現した場合や、絵本の印刷などで原画のカラートーンを正確に再現したい場合などに多用されるテクニックです。この場合は、多色分解のための版のつくり方、補う特色の選び方などが、仕上がりを決定する要因となるわけですが、デザイナー自身が直接携われない工程もあるので、経験豊富な製版技術者の判断に任せるのが妥当です。事前に印刷会社と打ち合わせを行って、どのような仕上がりイメージを求めているのかをしっかり伝え、それにもとづいた工程を組んでもらうのがよいでしょう。

印刷事故解決策の一例

モノトーンの写真を印刷する場合
をスミ1色の印刷でトーンが浅くなりがちなので、2~3色印刷用の分解を行い、ダークグレーやダークブルー、ダークブラウンなどの特色を補います。

鉛筆デッサンの作品集を印刷する場合
スミ1色の印刷では鉛筆のタッチが生きません。2色分解を行い、スミのほかにダークグレーかシルバーなどの特色を補います。

絵画・カラー写真を印刷する場合
あざやかなオレンジ、明るい緑、深みのある青系の色などの再現性が落ちます。多色分解を行って、適切な特色を補う、小さめの写真原稿を極端に拡大する、カラートーンが鈍く、暗くなることがある場合、原稿を多色分解にして明るめの特色や蛍光色を補う、などの作業を行います。